TECHNOLOGY&ECOLOGY

顕微鏡歯科
見る力を強化する

1.

このドレープ、三橋さんのSNSを見た権威ある米国の顕微歯科医も興味を持ち、「当院でも使いたいので送ってくれないか」との連絡があったという。

東京都世田谷区の住宅街に歯科診療所を構えるデンタルみつはし。
「ていねい、かつ安全・安心な歯科治療を行うこと」をモットーにする院長の三橋純さんが行っている診療は、
顕微鏡を用いてむし歯や歯周病の治療を行う「顕微鏡歯科」だ。

「我々歯科医は口の中にある患部を目で見て診断し、治療を行っていく。見えないところを見えるように。つまり〝見える力を強化する〟ことで、より質の高い診断や治療を行えると考えています」
口の中は我々が考える以上に狭くて暗い。奥歯や歯の裏側に病変があっても見逃されることもある。 顕微鏡歯科はこの問題を解決するために誕生した最先端医療だ。
「顕微鏡を用いると口腔内の見えにくい部分を拡大して観察することができます。それによりむし歯の削り残しや、髪の毛より細い歯の根元の神経の処置が可能です。またクラウンやブリッジなどを装着するときも、ミクロン単位での調整が可能です」(三橋さん)
その結果、従来の歯科では5~6割程度だった根管治療(歯の根の治療)治療成績を、9割以上に高めることができた(※1)。

※1肉眼で行う従来法では59%ほどだった歯根端切除術の成功率が、顕微鏡を用いることで94%ま向上した。FC Setzer, et al: Outcome of endodontic surgery: a meta-analysis of the literature--part 1: Comparison of traditional root-end surgery and endodontic microsurgery. J Endod, 36

2.

治療で使う器具は高性能洗浄機で洗浄・消毒する。

コロナ禍でも歯科は安全
その理由とは

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三橋純
医療法人社団顕歯科デンタルみつはし理事長
【profile】新潟大学歯学部卒業。
日本顕微鏡歯科学会前会長、認定指導医。
日本大学客員教授
【clinic data】デンタルみつはし
世田谷区松原3-28-6 A&A オークビル 1F
TEL:03-3327-8170
FAX:03-3327-8170
URL:http://www.mitsuhashi-micro.com

2020年、医療現場を震撼させる出来事が勃発した。中国・武漢市を端に発した新型コロナウイルス感染症の感染拡大だ。影響は医科だけでなく歯科にも及ぶ。
デンタルみつはしも、最初の緊急事態宣言が発出された4月上旬から約1カ月休診し、急患にのみ対応した。「この間、嫌というほど感染対策について研究した」と三橋さん。
歯科はそもそも感染に比較的強い領域と考えられている。実際、今回の新型コロナでも歯科医院・病院でのクラスターは、報道ベースでは明らかになっていない。三橋さんはその理由を「以前から歯科は感染対策に関してはシビアに行っていた」と、分析する。
「我々が治療をするのは、患者さんの口の中。だから何にしても感染リスクは高い。当時から〝患者さんは感染者である〟という前提に立ち、肝炎やHIVといった血液や唾液を介した感染を防ぐため、スタンダート・プリコーション(標準予防策)としてマスクや手袋は必ずしていました」

独自に編み出した飛沫感染策
マイクロドレーブとオゾンガス

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診療室の窓際にはloopと二酸化炭素計測器。

これが結果的に新型コロナで最も問題となる接触感染の予防につながっているという。 デンタルみつはしでは、スタンダート・プリコーションに加え診療で用いる器具の洗浄・消毒や、滅菌を欧州のレベルに合わせるなど、より強固な感染対策を講じている。だからこそ気になったのが、歯を削るときなどに出る飛沫。新型コロナでは飛沫感染が危ないといわれている。これを防げる術はないか――。

三橋さんが見つけた答えが
「マイクロドレープ」と「オゾンガス」だった。

マイクロドレープとは患者の首か上を覆うビニール製のガードで、なんと自身の手作りだ。
知り合いの若手の歯科医が行っていた感染対策をヒントに作りあげた。これを治療時に患者さんにかぶせ、治療が終わるごとに取り替える。直説覗き込まない顕微鏡歯科だからできた斬新な手法だ。
「これで接触だけでなく飛沫による感染を防ぐことができるようになりました」(三橋さん)
こうした対策とあわせて実施したのが、オゾン発生装置の設置だ。待ち合いにはタムラテコ社のオゾン空気洗浄機BT‐180Hを、診療を行うユニットのサイドには Space Clean Loopを置いた。診療後は業務用の「おらくりん-CT」で、CT値300という濃度(※2)で毎日除菌を行う。

※2 CT値とはオゾン濃度と時間をかけ算したもので、殺菌や不活化成功を示す指標。
国際的に認められている。

5.

診療室の棚上にはおらくりんを設置。診察後は除菌を行う。

より安全・より安心を目指す

「感染者が出ていないから、今まで通りで問題ないという考えもありますが、当院は〝より安全、より安心〟を目指す」と 三橋さん。タムラテコ社のオゾン製品を使い始めたのは、2000年4月。新型コロナに関するエビデンスが明らかになっていない時期だった。

6.

新しい歯科診療に対する三橋さんの考え方が載っている。
『the Quintessence vol.39
NO.92020-2128 FEATURE 特集3 』より

その後、低濃度オゾンガスの新型コロナウイルスへの不活化効果(感染性を失わせる効果)が、藤田保健医科大学(愛知県豊明市)の村田貴之教授(ウイルス・寄生虫学)によって実証された。
「Space Clean Loop は円筒型で部屋になじみやすいデザイン。患者さんも興味が湧くみたいで、『コレなんですか?』と聞いてきますね。オゾンはウイルスを包む膜を破壊するので、従来株だけでなくデルタ株への効果もあるのではと、期待しています」(三橋さん)
生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである―。
これは進化論で知られるチャールズ・ダーウィンの格言だ。コロナ禍の今、三橋さんはこの文言を心に刻みながら診療にあたる。そんなデンタルみつはしをタムラテコは「安全、安心」という観点から支え続ける。